賃料の滞納について

今回は、賃料の滞納問題について書いてみたいと思います。建物の賃貸借を例に取ります。

 

 

賃料の滞納は、大家さんとしては頭の痛い問題です。

基本的には、なるべく早く処理する方が好ましいと言えます。滞納額が大きくなると収拾がつかなくなるからです。

 

 

例えば、滞納が100万円になったとします。積もり積もって100万円です。払えないから滞納するのです。通常100万円を一括返済することはできません。

 

 

滞納している人は、よく、「少しずつ払います」と言います。しかし、ただでさえ滞納しているのに上乗せして払うことは困難です。

 

 

ですから、「いずれ払ってくれるだろう」と思って猶予を与えると、結局、滞納額が膨れていきます。

 

 

金額が膨れあがって、これ以上我慢ならないとなってから弁護士に相談に来られる方が多いです。

 

 

こういう場合、一般的には建物明渡訴訟をすることになります。しかし、明渡訴訟は時間と費用が結構かかります。費用は弁護士費用も必要ですが、明渡業者の費用がかなりかかります。大家さんの中には明渡業者の費用を余り意識されていない方もおられます。

 

 

業者の費用というのは、簡単に言えば、引越費用と保管費用です。

強制執行というのは荷物を運び出しますので引越のようなものです。

 

 

ところが、通常の引越とは違い、強制執行は危険を伴うこともありますし、特殊な目録の記載方法を習得している必要があります。その他、様々な明け渡しのテクニックが必要です。ですから、結構、高額となります。

 

 

また、建物の明渡自体は、建物内から動産類(人が居座る場合は人も)を搬出することで完了しますが、搬出された動産類は大家さんのものではなく賃借人のものです。ですから勝手に処分できません。法律の規定に従って一定期間保管する必要があります。

 

 

この保管のために倉庫を有償で借りる必要があり、保管費用が発生するのです。特に、この保管費用については意識されていない方が結構いらっしゃいます。

 

 

もっとも、執行官の判断で「即日売却」が可能な場合があります。この場合は保管費用が必要ありません。

 

 

これらの費用は誰が持つかというと、本来の理屈では家賃を滞納した賃借人が負担すべきものです。しかし、本来負担すべき賃借人にはお金がありません。だから、大家さんが立て替えることになります。理屈はどうであれ、実際には誰かが支払わなければ執行官も業者も動いてくれません。

 

 

では、立て替えたお金はどうなるのでしょうか?もうお分かりですよね。理屈として賃借人に請求することは可能ですが、回収できる見込みはまずありません。

 

 

結局、100万円の滞納賃料は回収できず明渡費用も負担して、しかも時間がかかります。この時間を新しい賃借人に貸したほうがよっぽど得です。

 

 

現実的には、3〜4か月滞納した時点で、内容証明郵便等で督促することが効果的です。この時点ならば、賃借人が頑張れば追いつける可能性があるからです。また、「内容証明郵便」が届いたというプレッシャーを与えることで一定程度の効果を期待できます。

 

 

そして、相手の対応にもよりますが、滞納が続きそうな場合は、賃料をあきらめてでも早期に荷物をまとめて退去してもらえば損害は少なくて済みます。

 

 

また、退去しそうにない人の場合は、早めに訴訟を提起してしまうのも一つの選択肢です。なお、訴訟手続きの中でも和解が可能ですので、裁判官から説得してもらって早期に退去してもらう場合もあります。任意に退去してくれれば、上記のような業者の費用が不要となりますし、解決までの時間も短縮できます。

 

 

いずれにしても、早めに行動することが肝要です。

もっとも、事案によっては、明渡の訴訟提起が「権利濫用」とされるケースもありますので、詳しくは法律専門家に相談されることをお勧めします。