交通事故における「信頼の原則」

交通事故において「信頼の原則」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?


判例によると,信頼の原則とは「他の交通関与者が交通秩序に従った適切な行動を取ることを信頼するのが相当である場合には、その者の不適切な行動によって生じた交通事故について加害者たる交通関与者は責任を負わない」ものと説明されています。


具体的には,交通ルールに則って周りを注意して運転していても,相手が通常では予想できないような避けられないような動きをした場合には,過失がない(過失割合がゼロ)ということになります。


ここで,重要なのは,まず,基本的に自分が「交通ルールに則っていること」が必要です。


「急な飛び出しだから避けられなかった」と主張をしても,制限速度50キロメートルの道路なのに自車が70キロメートルを出していた場合,「制限速度を守っていたら避けることは可能だった」と認定される場合があります。


次に,相手が「通常では予想できない」動きをした場合に限られます。ここでいう「通常」とは,相手の属性によって異なります。


例えば,小さな子供が歩行していた場合,子供は不用意に車道にはみ出すことが「通常」あり得ます。
このような場合,「子供が飛び出すはずはないと思った。」と言っても通用しません(過失はゼロにはなりません)。


このように,「信頼の原則」があるといっても,ドライバーには常に慎重な運転が要求されていますのでご注意ください。