子の引渡しの強制執行

本年4月1日より新しい民事執行法が施行されました。

 

 

今回は,その中から「子の引渡しの強制執行」について書きます。

 

 

「子の引渡しの強制執行」がどのような場合に行われるかというと,例えば,離婚した夫婦に未成年の子がいて,最初は母親が親権者だったのだけれども,裁判で親権者が父親に変更されたというケースを想定してみます。

 

 

新しく親権者となった父親が母親に対して「子どもを引き渡せ」という裁判を起こすと,裁判所は母親に対して「父親に子どもを引き渡しなさい」という命令(審判)を出します。

 

 

この命令に従って母親が父親に子どもを引き渡せば強制執行の必要はありません。

 

 

しかし,母親が引き渡さない場合には強制執行が必要となります。

ところで,「強制執行」といっても何通りか種類があります。

 

 

まず,「直接強制」があります。文字どおり,「直接」的に対象物を取り上げることです。

また,「間接強制」というのもあります。これは,引渡しを命じられた人が自主的に引き渡すまで一定の金銭を支払わせる方法です。経済制裁のようなものです。

 

 

従来,子の引渡しについては法律に明確な規程がなく,実務の運用としては,「間接強制」を行ったり,「直接強制」を場合には,子どもが親(先ほどの例でいうと母親)と一緒にいるときにしか執行できないというルールで運用していました。

 

 

しかし,子どもが嫌がったり,親が子を抱きかかえて離さないような場合には執行ができないという問題点がありました。

 

 

今回の改正では,子を監護する親(先ほどの例でいうと母親)がいない場所でも執行できることが法律に明記されました。そのため,例えば,学校に協力を依頼して学校の中で子どもを引き渡してもらうことなどが可能になりました。

 

 

 

とはいえ,やはり,子どもを力尽くで連れ去ることは禁止されています。また,子どもを安心させるために,原則として,引渡しを求めた親(先ほどの例でいうと父親)が同行するという決まりになりました。