今回は,民事執行法の改正のうち,「勤務先情報の開示」について書かせていただきます。
例えば,養育費の金額で話し合いがつかずに裁判所に決めてもらう場合があります。しかし,裁判所で金額が決まったにもかかわらず支払わない人が結構います。
裁判で決まった金額を相手が支払わない場合は,裁判所に対して強制執行を申し立てることができます。
強制執行の一つに給与の差押えという方法があります。しかし,相手の勤務先が分からないと給与の差押えはできませんので,これまでは諦める人がたくさんいました。
今回の民事執行法の改正の一つとして,一定の要件を満たす場合には,「勤務先情報の開示」を受けられるようになりました。
具体的には,養育費請求権や「人の生命若しくは身体の侵害による損害賠償請求権」(例えば交通事故による損害賠償請求権)について確定判決などを有している場合,「財産開示手続」(詳細は省略します)を経た上で,市役所や日本年金機構等から相手の勤務先の情報を開示してもらうことができます。
会社員の人は,一般的に会社から給料を受け取るときに住民税を天引きされています。天引きされた住民税は,勤務先の会社が従業員に代わって市町村に納付します。
また,会社員は厚生年金保険料についても給料から天引きされています。これも住民税と同様に会社が従業員に代わって日本年金機構等に納付します。
その結果,市町村や日本年金機構等には「誰がどの会社に勤めているか」という情報が集まってきます。
その情報を利用することができるようになったのです。
今回の改正によって,これまで諦めていた養育費の強制執行などが容易になったといえるでしょう。