俳優の伊勢谷友介氏が大麻取締法違反で逮捕,起訴された後に保釈されたというニュースがありました。
伊勢谷氏は容疑を認めているそうですが,大麻の入手ルートについては話していないとのことです。
このことについて,入手ルートを言わないまま保釈してもいいのか,という声が上がっているようです。
そもそも,保釈というのは無罪放免のことではなくて,裁判が始まるまでの間,身体拘束を解くことです。そこをまず抑えておきましょう。
その上で,大麻の入手ルートを言わないまま保釈をしてもいいのかという点ですが,たしかに,過去に薬物で逮捕,起訴された芸能人は薬物の入手ルートを打ち明けてから保釈されているケースが多いようです。
そして,入手ルートが判明したことで暴力団の一つの組織を壊滅的状態にまで追い込んだこともあったようです。
このように,薬物の入手ルートが判明することで薬物犯罪の防止に役立つことは間違いありません。
では,「入手ルートを話さないのに保釈してよいか」についてですが,逆に言えば,「入手ルートを話さない人は保釈しない」というやり方は正しいのか,という言い方もできます。
そもそも保釈は,裁判が始まるまでの間,身体拘束を解くことです。また,刑事被告人には「無罪推定の原則」が働きますから,有罪判決が確定する前に必要以上に身体拘束を行うことは許されません。
どういう場合に保釈するのかについては法律に規定があります。細かく説明すると複雑になるので大雑把に言いますと,証拠を隠滅するおそれや,証人など事件の関係者を脅迫したりするおそれが大きくない場合には保釈を認めなければならないことになっています(刑事訴訟法89条)。
今回の伊勢谷氏の件について言えば,証拠である大麻は押収されているし,尿検査で大麻の使用について陽性の結果が出ています。
これ以外に隠すような証拠は考えにくいですし,裁判を有利に進めるために事件の関係者を脅したり危害を加えたりする可能性も考えにくいと言えます。
そうしますと,法律上は保釈を認めないといけない場合に該当します。
ですので,市民感覚としてはいろいろ意見があるところですが,法律的には保釈は妥当ということになります。