大法廷と小法廷

令和2年12月に,夫婦別姓を認めない現在の法律は憲法に違反しているとして起こされた裁判について最高裁判所の小法廷が大法廷へ回付することを決めた,というニュースがありました。

 

 

現行法では,法律上の夫婦になると夫と妻は同じ姓を名乗らないといけません。これは民法750条に規定されています。

 

 

今回の裁判を起こしたのは,別姓のまま婚姻届を出そうとして受理されなかった事実婚の夫婦です。

 

 

訴えた理由としては,民法750条などが憲法14条などに違反する,というものです。

 

 

憲法14条というのは,法の下の平等を定めた規定です。本件は男女の平等に違反するという主張です。

 

 

しかし,第一審の家庭裁判所は訴えを退けました。

 

 

家庭裁判所は訴えを退けた理由として平成27年の最高裁判決を引用しています。

平成27年の最高裁判決では,夫婦同姓を定めた民法の規定を合憲と判断しており,その理由として,「家族の姓を一つに定めることは社会に定着しており合理性がある」,「夫婦がいずれの姓を名乗るかは夫婦が選択することなので,法律自体に不平等は存在しない。」などを挙げています。

 

 

また,第二審の高等裁判所でも同様に訴えは退けられました。

 

 

この裁判が,現在,最高裁の小法廷で審理されています。

最高裁判所には15人の裁判官がおり,15人の裁判官全員で構成する「大法廷」と5人の裁判官で構成する3つの「小法廷」があります。

今回,「小法廷」がこの裁判を大法廷に回付する(回す)ことにしたのです。

 

 

回付については最高裁判所事務処理規則9条に規定されていて,裁判官の意見が分かれているときや大きな問題なので大法廷で審理すべきだというようなときには大法廷に回付できることとされています。

 

 

 

もっとも,大法廷に回付されても「大法廷で審理することになる」というだけで,憲法違反という結論になるかどうかはか分かりません。