時短命令に提訴

先月(3月),飲食店を経営する会社が東京都の時短命令は違法であるとして,損害賠償を求めて提訴したというニュースがありました。

 

 

まず,東京都の出した時短命令について説明します。

 

 

新型コロナウイルス対策の特別措置法(正式名称:新型インフルエンザ等対策特別措置法)が今年の2月に改正されました。

 

 

それまでの法律では,緊急事態宣言の状況下において,時短営業等の「要請」ができるという内容だったのが,改正後は「命令」を出せるようになりました。

 

 

「要請」と「命令」では意味が全く違います。「要請」は一種の「お願い」ですが,「命令」には従う義務があります。

しかも,改正法では,「命令」に従わない場合の罰則も規定されています(緊急事態宣言の場合:30万円以下の過料,まん延防止措置の場合:20万円以下の過料)。

 

 

この改正法に基づいて,東京都は,3月18日,営業時間短縮の要請に応じていない飲食店27店に対して時短営業の命令を出しました。

 

 

ところが,命令を出された飲食店27店のうち,26店舗が「グローバルダイニング」という会社が経営する店舗だったのです。

 

 

命令を出した理由について,東京都は,「対象施設は,20時以降も対象施設を使用して飲食店の営業を継続し,客の来店を促すことで,飲食につながる人の流れを増大させ,市中の感染リスクを高めている。加えて,緊急事態宣言に応じない旨を強く発信するなど,他の飲食店の20時以降の営業継続を誘発するおそれがある」と説明しています。

 

 

実際,この会社は,会社のwebサイトやSNSで時短要請に応じないという会社の考え方を発信していました。

 

 

会社としては,時短要請に応じない理由を複数述べていますが,そのうちの1つに,「店舗の規模が大きいので1日1店舗6万円の協力金では経営的に厳しい」ということを挙げています。

 

 

改正法によれば,「命令」を出すことができるのは,「正当な理由がなく」都道府県の要請に応じない場合とされており,国が都道府県に出している通達によれば,店の経営状況等を理由に要請に応じないことは「正当な理由」に該当しないとされています。

 

 

しかしながら,「通達」は法令ではなく,国民に対して直接の拘束力を持ちません。「通達」の妥当性なども含めて裁判所が判断することになります。

また,この会社が時短要請に応じない旨の考え方を発信していたことを理由の1つとして命令を出した点については,表現の自由の侵害ではないかという点も問題となるでしょう。