特別受益による持戻し義務があるのは「共同相続人」(民法903条1項)ですが、代襲相続の場合に「共同相続人」をどう考えるべきかという問題があります。
この問題については、特別受益を受けた者が「被代襲者」なのか、「代襲者」なのかを分けて考える必要があります。
まず、特別受益を受けた者が「被代襲者」である場合、原則として代襲相続人は被代襲者の持戻し義務を引き継ぐことになります。
もっとも、審判例では、被代襲者が受けた特別受益の性質が受益者の人格とともに消滅する一身専属的性格のものであることを理由に代襲相続人の持戻し義務を否定したものもあります(鹿児島家裁昭和44年6月25日審判)。
次に、代襲者自身が直接特別受益を受けた場合については、代襲者が被代襲者の死亡等により共同相続人となる前に受けたものは当別受益に該当しないが、相続人となった後に受けたものは特別受益に該当し持戻し義務を負うというのが通説です。