「学費は特別受益になりますか?」という質問をよく受けます。
特別受益とは、共同相続人の中に、被相続人から遺贈を受けたり、生前に贈与を受けたりした者がいた場合に、相続に際して、共同相続人間の公平を図ることを目的に、特別な受益を相続分の前渡しとみて、計算上贈与を相続財産に持ち戻して相続分を算定することです(民法903条)。
学費についてはよく問題になるのですが、高等学校卒業までの学費は通常、特別受益とはならないでしょう。
高校卒業後の学費については、私立大学医学部の入学金・授業料や海外留学費用などのように特別に多額なものは特別受益に該当する場合があります。
この点、裁判例としては、大阪高裁平成19年12月6日決定が「本件のように、被相続人の子供らが、大学や師範学校等、当時としては高等教育と評価できる教育を受けていく中で、子供の個人差その他の事情により、公立・私立等が分かれ、その費用に差が生じることがあるとしても、通常、親の子に対する扶養の一内容として支出されるもので、遺産の先渡しとしての趣旨を含まないものと認識するのが一般的であり、仮に、特別受益と評価しうるとしても、特段の事情のない限り、被相続人の持戻し免除の意思が推定されるものというべきである。」と判示しています。
上記裁判例からすれば、学費については、相続人間で相当多額の差が生じない限り、特別受益とは認められないものと思われます。