相続人の廃除とは、被相続人の意思によって推定相続人から相続権を剥奪する制度です。
「どうしてもあの子には遺産を残したくない」というような場合に使える強力な手段です。
ただし、相続廃除のための要件は法律で決まっており、手続についても法律で決められた方法を採る必要があります。
相続廃除の要件としては、①相続人が被相続人を虐待した場合、②相続人が被相続人に重大な侮辱を加えた場合、③相続人に著しい非行があった場合、という3つが規定されています(民法892条)。
①の虐待とは、家族的共同生活関係の継続を不可能にするほど、その関係又は心理に苦痛を与える行為をいうとされています。
②の侮辱とは、家族的共同生活関係の継続を不可能にするほど、被相続人の名誉又は自尊心を傷つける行為をいうとされています。
③の著しい非行とは、犯罪、浪費などで著しく悪質な行為をいうとされています。
次に廃除の方法ですが、
a)被相続人自身が生前に家庭裁判所に相続廃除の請求をする方法
b)被相続人が遺言書に相続廃除の意思表示をして、相続開始後に遺言執行者が家庭裁判所に請求を行う方法
の2つがあります。
いずれの場合でも、家庭裁判所に申立を行う必要があります(被相続人の生前は被相続人が、遺言の場合は遺言執行者が申し立てる)。
相続廃除の申立てがなされると家庭裁判所で審判手続きが行われます。
審判手続きでは、申立人(被相続人又は遺言執行者)と推定相続人が廃除事由の有無について主張、立証を行い、最終的に裁判官が諸事情を総合的に判断して廃除を認めるかどうかの結論を下します。
このように、相続人廃除のためには家庭裁判所での審理が必要で、裁判所はかなり慎重に吟味しますので、廃除が認められるのは容易ではありません。