法律相談で特別受益の話になったときに、よく出てくるのが、「兄は父名義の建物に無償で10年間住んでいました。通常なら家賃10万円は取れる家なので、10万円×12か月×10年=1200万円が特別受益ですよね?」という質問です。
しかし、被相続人名義の建物の無償使用の使用料については特別受益には該当しないという見解が一般的です。
理由としては、特別受益というのは「遺産の前渡し」という性格のものであるところ、被相続人としては、通常、不動産を無償で使用させることを「遺産の前渡し」とは考えていないであろう、ということが言われています。
これに対して、相続人が被相続人の許可を得て、被相続人の土地の上に建物を建てて居住していた(被相続人の土地を無償で使用していた)場合は、少し異なります。
この場合も、土地使用の対価(地代相当額)については特別受益に該当しないとされています。
もっとも、土地の無償使用の場合は、土地使用貸借契約の存在により土地の評価が一定程度減価することになります。
その減価分(使用借権相当額)は建物所有者に贈与されたと評価できますので、使用借権相当額が特別受益に該当することになります。
一般に使用借権相当額は土地の1割程度と言われています。