法律相談では、「長年親の介護をしてきたので寄与分が認められないでしょうか?」という質問をよく受けます。
親の介護で寄与分が認められるかは非常に難しい問題です。
寄与分というのは相続人の行為によって被相続人の財産を増加させたか維持した(減少を食い止めた)場合でなければ認められません。
一般に長年親の介護をしたとしても親の財産が増えるわけではないのでそれだけでは寄与分が認められることはありません。
しかし、例外的に寄与分が認められることはあります。
それは、相続人が介護したことによって、介護のための費用の支出を抑えたことが証明できる場合です。
理屈としては、本来であればプロに介護をお願いしなければならない状態であったのに、相続人自身が介護をしたことで介護費用を節約したので、その分、被相続人の財産の減少を防いだ(維持した)と考えるのです。
そして、「財産の減少を防いだ」額を数値として表せなければなりません。
そのためには、まず、「本来ならばプロにお願いしなければならない状態」であったことを証明しなければなりません。
これを証明するためには、被相続人が入通院をしていた病院のカルテや介護施設の生活記録等を取り寄せます。そして、ただ単に取り寄せただけではダメで、そこに「プロにお願いしなければならない」程度の状態であったことが記載されていなければなりません。
また、介護認定の資料なども取り寄せるのが一般的です。おおむね要介護度2以上の程度でなければ「プロの介護が必要な状態」とは認められません。
その上で、プロの介護を依頼せずに相続人自身が実際に介護したことを証明しなければなりません。
この部分は日記や自身で記録した介護日誌、親族や近隣住民の証言などで証明することになります。
さらに、それらを証明した上で、相続人の介護によって「浮いた」費用を算出しなければなりません。
この部分は、「実際にプロに頼んだらこれくらい支出したはずだ」と説明できる資料などを提出することになります。
このようにして、相続人の介護により相続財産が減少せずに済んだ金額を証明して、それが親族としての通常の寄与ではなく、「特別の寄与」だと認められれば寄与分が認められることになります。
ここまでお読みいただければお分かりかと思いますが、親族が介護をした場合の寄与分は簡単には認めらないのが現状です。