Q 父親が死亡しました。父親の財産といえば、自宅の不動産とわずかな預金がある程度です。むしろ、事業をしていた関係で銀行から多額の借入金があります。銀行からの借入金は相続の対象にはならないのでしょうか?
A 相続の対象になります。ですから、自宅不動産と預金の合計額(プラスの財産)と借入金の額(マイナスの財産)を比べてみる必要があります。
プラスの財産のほうが大きければ相続する意味がありますが、マイナスの財産のほうが大きければ相続する意味は原則としてありません。
このような場合は「相続放棄」という手続きをすることによって借入金債務を相続しなくて済みます。ただし、「相続放棄」をするとプラスの財産も相続できません。
Q 先日、父親が亡くなりました。法定相続人は母と兄と私の3人です。私は、父親の生前に母と兄から頼まれて、「父親が亡くなった場合は相続を放棄します。」という念書を差し入れていました。このような念書を作成してしまった以上、私は父の遺産を相続することはできないのでしょうか?
A いいえ。相続することができます。被相続人の生前に相続放棄をすることはできず、「亡くなった場合には相続放棄する」との約束も法律上、効力はありません。したがって、あなたが作成した念書には効力がなく、お父様の遺産を相続することができます。
Q 相続放棄した場合でも生命保険金を受け取ることはできますか?
A 相続放棄をした場合であっても、生命保険の受取人としてあなたが指定されていれば受け取ることができます。受取人欄に「法定相続人」と記載されている場合も受け取ることができます。ただし、受取人が被相続人自身になっている場合には、保険金は被相続人の相続財産となりますので、相続放棄をした場合には受け取ることができません。
Q 役所の人から、「死亡した父親の未支給年金があるので受取りの手続をするように」と言われました。しかし、私は、父親の相続を放棄する予定です。相続を放棄すれば未支給年金を受け取ることはできないのでしょうか?
A 未支給年金は相続財産ではなく受取人固有の権利であるとされているので、相続放棄を行っても受け取ることは可能です。
Q 相続放棄をする場合、相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述の手続きをとらなければならないと聞きました。先日、3か月以内ギリギリに家庭裁判所に相続放棄の書類を提出したのですが、裁判所が書類を審査している間に3か月が経過してしまうと「受理」されずに相続放棄できないことになるのでしょうか?
A 3か月以内に申述手続を行えば、裁判所の書類審査中に3か月が経過しても大丈夫です。書類に不備があって裁判所から書類の追加を指示された場合でも、指示に従って書類を追完すれば(結果的に3か月を経過してしまっても)大丈夫です。
Q 被相続人の財産から被相続人の葬儀費用を支払いました。この場合、法定単純承認(民法921条1号)に該当することになり、相続放棄をすることはできないのでしょうか?
A 大阪高裁平成14年7月3日決定によると、被相続人の財産から葬儀費用を支出したことについて、「葬儀は(中略)社会的儀式として必要性が高いものである。(中略)葬儀を執り行うためには、必ず相当額の支出を伴うものである。これらの点からすれば、被相続人に相続財産があるときは、それをもって被相続人の葬儀費用に充当しても社会的見地から不当なものとはいえない。」として、法定単純承認には当たらないと判断されています。したがって、特別に豪華な葬儀でなければ、葬儀費用を被相続人の財産から支払ったとしても法定単純承認には当たらず、相続放棄をすることは可能だと思われます。
Q 5年前に父親が亡くなりました。父親にはめぼしい資産はなく多額の債務があったため、私は相続を放棄しました。そして、先月、父方の祖父が亡くなりました。祖父には一定の遺産があります。父親の相続を放棄していても祖父の遺産を相続することはできるのでしょうか?
A 相続できます。お父様の相続を放棄したことと、お祖父様の相続は別のことですので、お祖父様の遺産を代襲相続することができます。